シロアリの生物学上の分類
世界には2千数約種類のシロアリが住むといわれています。
科による大きな分類では、シロアリ科、レイビシロアリ科、シュウカクシロアリ科、オオシロアリ科、ゲンシロアリ科、ノコギリシロアリ科、ミゾガシラシロアリ科の7種類に分けるのが一般的で、それぞれ特徴をもっています。
科による分類をまとめると以下のようになります。
| 科 | 種 | 特徴 | 分類 |
|---|---|---|---|
| シロアリ科 | タカサゴシロアリなど |
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高等 シロアリ |
| オオシロアリ科 | オオシロアリ ネバダオオシロアリなど |
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下等 シロアリ |
| ゲンシロアリ科 | ムカシシロアリ のみ |
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| シュウカク シロアリ科 |
Hodotermes など |
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| ノコギリシロアリ科 | ノコギリシロアリのみ |
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| ミゾガシラ シロアリ科 |
ヤマトシロアリ イエシロアリなど |
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| レイビシロアリ科 | アメリカカンザイシロアリ ダイコクシロアリなど |
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シロアリの生態区分
食性による区分
シロアリは科による分類だけでなく、その生態による基準でいくつかに区分することができます。
食性と生息場所を基準にまとめると以下のようになります。
| 食性 | 種類 |
|---|---|
| 木材や樹木 |
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| 食物の葉や草 |
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| 落ち葉や枯れ枝 |
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| 腐葉土 |
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| 地衣類(コケなど) |
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※木材、樹木を直接食べない。利用してキノコを栽培して食べる。
生息場所による区分
| 区分 | 科 | 種 | |
|---|---|---|---|
| 土壌性 | 土の中か、土の塚に生息 |
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| 土木生息性シロアリ 土中、木材、樹木にも生息。普通は土中生息。 |
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| 非土壌 | 木生息性シロアリ 土壌と関係せず、樹木や木材の中に生息する 乾材シロアリと湿材シロアリに分かれる |
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日本に生息する白蟻の種類
日本には4科13種20数種類のシロアリが住むといわれ、その多くは西日本以西に集中しています。
生息場所を基準にまとめると以下のようになります。
- 土壌性シロアリ
- 土木生息性シロアリ・・・通常は土壌と関係するが、樹木や木材にも生息する。
- イエシロアリ (Coptotermes formosanus)
- コウシュウイエシロアリ (Conptotermes guangzhouensis)
- フィリピンイエシロアリ (Conptotermes vastator)
- ヤマトシロアリ (Reticulitermes speratus)
- カンモンシロアリ (Reticulitermes kanmonensis)
- キアシシロアリ (Reticulitermes flaviceps)
- ミヤタケシロアリ (Reticulitermes miyatakei)
- アマミシロアリ (Reticulitermes amamianus)
- オキナワヤマトシロアリ (Reticulitermes okinawanus)
- ヤエヤマヤマトシロアリ (Reticulitermes yaeyamanus)
- タカサゴシロアリ (Nasutitermes takasagoensis)
- 土生息性シロアリ・・・土壌や土の塚に生息する。
- タイワンシロアリ (Odontotermes formosanus)
- ニトベシロアリ (Pericapritermes nitobei)
- ムシャシロアリ (Sinocapritermes mushae)
- トビツノシロアリ (Termes sp.)
- 木生息性シロアリ・・・土壌との関係はなく、樹木もしくは材木の中に生息する。
- ダイコクシロアリ (Cryptotermes domesticus)
- アメリカカンザイシロアリ (Incisitermes minor)
- ハワイシロアリ (Incisitermes immigrans)
- コウシュンシロアリ (Neotermes koshunensis)
- カタンシロアリ (Glyptotermes fuscus)
- サツマシロアリ (Glyptotermes satsumensis)
- ナカジマシロアリ (Glyptotermes nakajimai)
- オオシロアリ (Hodotermopsis sjostedti)
- ネバダオオシロアリ (Zootermopsis nevadensis)
※( ) カッコ内表記は世界共通の名称(学名)。初めの単語に属名を、次に種小名を表記してある。
家屋に被害を及ぼす日本のシロアリ
木造建築の多い我が国では、シロアリは古くから大害虫として知られています。家屋の被害も全国的に及び、古い寺院や仏像など多くの文化遺産まで痛々しい被害をうけており、その被害額は火災よりも大きいと言われています。
ひとことでシロアリといっても、すべての種類が家屋に被害を及ぼすわけではなく、その大部分は家屋とは関係せずに生きています。
家屋に被害をもたらす日本に生息するシロアリをまとめると以下のようになります。
| 生息区分 | 種類 | 種数 | 家屋への被害程度 | |
|---|---|---|---|---|
| 土壌性 シロアリ |
土木生息性 | ヤマトシロアリの仲間 (Reticulitermes) |
7 | 大 |
| イエシロアリの仲間 (Coptotermes) |
3 | 甚大 | 土生息性 | タイワンシロアリ (Odontotermes) ※ |
1 | 被害の可能性ややあり |
| 非土壌性 シロアリ |
木生息性 | アメリカカンザイシロアリの仲間 (Incisitermes) |
2 | 大 |
| ダイコクシロアリの仲間 (Cryptotermes) ※ |
1 | 大 | ||
| アメリカオオシロアリの仲間 (Zootermpsis) |
1 | 場合によっては被害あり | ||
※ 沖縄以南に生息するシロアリ
シロアリとアリの違い
| 項目 | シロアリ(等翅目 Isoptera) | アリ(膜翅目 Hymenoptera) |
|---|---|---|
| 活動する個体 | 幼虫型(幼虫状態のまま活動する) | 成虫型(幼虫はウジ虫で活動できない) |
| 変態 | 漸変態(サナギの時期がない) | 完全変態(サナギにより根本的な変化がある) |
| 個体の外骨格 | 外界での活動に適さない柔らかな外骨格 | 外界での活動に適する強靭な外骨格 |
| 外界の活動 | 常に蟻道で覆われた状態で活動する | そのまま歩き回る (必要に応じて蟻道を作る) |
| 個体の動き | 割合遅く、単独行動はほとんどない | 割合俊敏で、単独行動のような活動もある |
| 体形 | 胸部の幅がやや狭いが一体形 | 腹部の付け根が極端に細くくびれている |
| 眼 | 羽アリ以外に明確な眼をもつ種は少数 | すべての成虫に眼がある |
| 触角 | 数珠状 | 「く」の字状 (まっすぐ伸ばしていることが多い) |
| 羽アリ | 羽根が4枚とも同じ大きさで、 容易に脱落する |
前羽根が明確に大きく、容易に脱落しない |
| 羽アリの羽根 | 網の目(翅脈)が細かい | 網の目(翅脈)が大まか |
| 羽アリの郡飛 | 環境との矛盾で起きる (間引き・個体数調整) |
基本的には毎年起こる (巣分かれと交尾) |
| 集団の性 | オスとメスは大まかに約半数ずつ | メスのみ(オスは季節的に出現) |
| 生殖虫 | 王・女王・補充生殖虫・ニンフ・副蟻 | 原則として女王のみ |
| 食性 | 主に植物の繊維質 (木質・草本・地衣類など) |
動物質から植物質まで多様 |
| 兵蟻 | 専門で特殊化した体形の階級として存在 | 専門の体形をもつ兵蟻は存在しない |
シロアリの構築物
| 種類 | 状態 | 特徴 |
|---|---|---|
| 蟻道 | 高密閉度 | おもに主要な活動域を密閉する。内皮構造をもつことがある |
| 蟻土 | ||
| 巣・塚 | おもに主要な活動域を密閉する。外壁や防水槽をもつことがある | |
| 泥線 | 低密閉度 | おもに主要な活動域を覆う。ある程度の外気の流通がある |
| 泥被 | ||
| 群飛孔 | 季節的につくられる臨時の構築物 |
※ 一般的には、泥線・泥被を蟻道・蟻土に含めて呼ぶ事が多い。
シロアリの種類によって特徴があり、ヤマトシロアリでは蟻道・蟻土と泥線・泥被の区別が明確だが、イエシロアリではほとんどが蟻道・蟻土、タイワンシロアリではすべて泥線・泥被である。
シロアリの分業と階級
職蟻
worker
| 集団に占める割合 | シロアリ集団の中の最も多くを占める |
|---|---|
| 任務 | 木材を直接かじる |
| 孵化直後の形 | 孵化直後でも動き回る(サナギ期間がないので、幼虫期間との間に根本的な変化がない)。成長した職蟻体形を小さくした外観で、白くて半透明。一部を除いて眼はない。 |
| 孵化直後の食 | 孵化当初は「幼虫」と言われ、巣の近くにいて、他の職蟻から栄養補給を受けて育つ。 |
| 栄養補給 | 木材の繊維であるセルロースを体内にあるセルローゼという酵素で分解し、消化しやすい糖分子に変える。この酵素は腸内に共生する原生動物が作り出すが、シロアリ自身でも作り出すことが近年の研究によって明らかにされている(渡辺 裕文、徳田 岳 2001年)。 |
| 昇級 | 下等なシロアリでは、高齢な職蟻を除いて、ほかの階級への成長の可能性をもっている。レイビシロアリ科(木の中でのみ生活するタイプ)では、すべての職蟻は羽アリへの成長途上にあり、背中に翅芽(羽根として成長する部分)をつけている。別称「擬職蟻 pseudevgate」※本当でない職蟻という意味。イエシロアリは下等シロアリに分類されるが、職蟻は固定型である。 |
| 分業 | 種によっては、大小、あるいは大中小のタイプに分かれて分業する。 |
| 分類上の根拠 | 職蟻の大顎(牙)は種によって独特な形をしているので、分類上の根拠とされている。 |
兵蟻
soldier
| 集団に占める割合 | 集団の1~2割程度を占めるが、種類によっては大きく異なる。イエシロアリの兵蟻は非常に多く目立つが、樹木シロアリのナカジマシロアリやアメリカカンザイシロアリなどでは非常に数が少ない。 |
|---|---|
| 任務 | 集団の防衛。防衛方式は種によって様々で、集団格闘型、置き去り型、捨て石型、通路閉鎖型などに分かれる。 |
| 孵化直後の形 | 卵から孵化していきなり兵蟻になることはなく、必ず半幼虫の職蟻の状態から兵蟻へと成長する。 |
| 成長過程の形 | 職蟻から兵蟻への成長過程には、「前兵蟻」(白兵蟻ともいう)という状態があり、大顎の形をもちながらも白くて柔らかで、次の脱皮によって兵蟻となる。一部を除いて眼はない。 |
| 食事と日常 | 兵蟻は多くの場合、頭部が特殊化しているので自分では餌をとらず、職蟻の扶養を受けている。ほとんどの種では、平時にはなにもせずにいる。餌が不足したりすると、最初に兵蟻が共食いの対象になることが多く、集団にとってはタンパク質の貯蔵という面もある。 |
| 頭部の形状 | 頭部の形状や機能によって「大顎型 mandibulate type」:大顎(牙)が発達しているタイプ(イエシロアリ、ヤマトシロアリ) 「象鼻型 nasute type」:大顎は退化しているが、額の吻が前方に伸びているタイプ(タカサゴシロアリなどのテングシロアリ亜科) 「中間型」:大顎は退化しているが、額腺が前方に突き出ているタイプ 大顎型にはさらに、噛みつくタイプ(ヤマトシロアリ)、噛みついて防御液を分泌するタイプ(イエシロアリ)、はさむタイプ、はじくタイプなどがある。 |
兵蟻の主な防衛方式
| 防衛タイプ | 頭部の形状 | 防衛行動 | 主な種類 |
|---|---|---|---|
| 通路閉鎖・少数防衛型 | 大顎型 | 穴を塞ぐ | ダイコクシロアリなど |
| 弾く | ニトベシロアリ | ||
| 噛みつく | ヤマトシロアリ、 コウシュンシロアリなど |
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| 格闘・集団防衛型 | 噛みついて液を塗る | イエシロアリ、 ツチミゾガシラシロアリなど |
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| テング型 | 液を吹き付ける | タカサゴシロアリなど | |
| 分担型 | 役割により異なる | 頭部の形状に合わせた防衛 | オオキノコシロアリの 仲間など |
| 自爆型 | 兵蟻をもたない | 職蟻が噛みついて自爆する | ムヘイシロアリ |
このほかにも戦闘的な職蟻が防衛にあたる種類もあり、防衛の方は様々である
ニンフ(擬蛹:ぎよう)
nymph
| 階級 | 羽アリの前段階の階級 |
|---|---|
| 特徴 | 職蟻よりも目立って大きく、成長に応じて背中に翅芽、または翅鞘(羽根が成長するケース)をつけ、眼(複眼)もついている。多くの場合、巣の近くで活動している。 |
| 成長 | 種によっては、ニンフから補充生殖虫や生殖虫に成長する。 |
有翅虫(ゆうしちゅう)
alate
| 階級 | ニンフが最後の脱皮を行うことで生まれる羽根のあるシロアリ(羽アリ)で生殖能力がある。 |
|---|---|
| 群飛 | オスとメスも同時に群飛し、羽根を落として営巣すると新しい集団ができる。羽アリの飛び出す時期や条件、集団のなかの数の割合も種類によって異なる。 |
| 習性 | どの羽アリも光に向かって飛び立つ(正の走行性・負の走地性)が、羽根を落とすことで光と反対方向に行動するようになる(負の走行性・正の走地性)。 |
| 分類上の根拠 | 羽アリの羽根は科や属という大きなグループの違いによって、翅脈(羽根の網目模様)が異なるので、シロアリの種類を知る根拠となる。 |
(王・女王)
King・Queen
| 階級 | 羽アリが群飛後に羽根を落として営巣すると生殖虫となるオスが『王』となり、メスが『女王』となる。これを「創始生殖虫 primary reproductive」(いわゆる第一次生殖虫)という。 |
|---|---|
| 特徴 | 創始生殖虫には一対の眼があり、羽根を切り落とした後の三角形の翅根部がニ対残っている。 |
| 産卵 | 女王は集団の成長に応じて産卵数も増え、卵巣が極端に発達して腹部が肥大化し歩くのも困難になる。 |
| 巣の発達 | 女王は巣の発達とともに王台という特別の部屋で産卵に専念するようになる。大きく発達した集団の女王は、一日に数万個の卵を産むといわれる。これに対して王は腹部の肥大がそれほど大きくなく、割合自由に歩くことができる。 |
| 体調管理 | 女王の周囲では職蟻が常に女王の体表をなめて管理しながら、産卵を促す信号を与えている。職蟻は女王の腹部先端で待ちかまえていて、卵が出てくると直ちにそれをくわえて一定の卵の集積場に積み上げる。 |
| 休息 | 女王は一定の周期で産卵期と休息期を繰り返しているので、女王の腹部の膨らみには変化がある。 |
(副王・副女王)
supplementary
reproductive
| 階級 | 生態 | タイプ | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 補 充 生 殖 虫 |
創始生殖虫のどちらか、または両方が死亡、または生殖不能になった場合、もしくは生殖を補完する必要がある場合、特別に成長したシロアリが生殖をおこなうようになる。これを「補充生殖虫」(副生殖虫すなはち副王・副女王)という。補充生殖虫には3つのタイプがある。 | 成虫型生殖虫 adultoid reproductive |
群飛の為に待機していた羽アリや、巣内で羽根を落とした羽アリが生殖行動を始めた場合がこのタイプ。翅根部や眼があるために、しばしば創始生殖虫と間違われることがある。タイワンシロアリなどでこういう現象があり、イエシロアリではほとんど見られない。 |
| ニンフ型生殖虫 nymphoid reproductive |
ニンフから生殖虫に成長したもので、背中には翅根部ではなく、翅芽がある。多くの場合、眼はないか未発達である。ヤマトシロアリやイエシロアリでは、ある程度以上の大きな巣では割合よく見つかる。 | ||
| 職蟻型生殖虫 ergatoid reproductive |
職蟻から生殖虫に成長したもので、眼はなく背中には翅根部も翅芽もない。近年の研究によると、イエシロアリでは、補充生殖虫を補充する「副蟻」という階級の存在も明らかにされている。 |
シロアリの環境適応力
| 対象 | イエシロアリ | ヤマトシロアリ | 結論 | ||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 温度 | 集中型のイエシロアリでは、巣を高度に発達させることで、巣内の温度を外気温の変化に比べて比較的一定に保つことが可能である。 天井裏の温度が夏場に高くなると、梁や桁などにある巣に水を運んで気化熱で冷房したりして工夫する。逆に寒い時期には巣の壁を厚くして外気温よりもはるかに高い温度を維持する。 |
世界で最も北に生息する広域分散型のヤマトシロアリでは、特に冬場の高温部分に敏感で南側のコンクリートでできた土間の下や温水器、風呂場周囲に被害がでやすく、生息位置を季節的に変化させて対応している | シロアリの活動できる温度範囲は「15℃超40℃未満」で、この温度範囲以外では死滅する試験データが実際にでている。しかし、自然から切り離されたばらばらのシロアリ個体を使った温度試験データは、実際の生息状況と矛盾することが多く、ましては外気温をコントロールできるシロアリにとっては、生きている限りではすべて好適と言える。実際にはシロアリの活動できる温度範囲はかなり広がり、たとえ15℃以下とか40℃以上になっても死に絶えるわけではない。 | ||||||||
| 水 | 「イエシロアリは水を運んで木を湿らせて食べる」という、これまでの常識は正しくない。湿り気に関係なく直接、木をかじっているのであって、いちいち水で濡らしているわけでもない。イエシロアリの被害は、ほとんどが乾燥した食害痕でもある。但し、水を運ぶという行為自体は、イエシロアリもヤマトシロアリもありうる。たとえば、屋根から雨水を導入して水を貯蔵するしくみをつくることがあるのもたしかである。 | 集団が小さいヤマトシロアリでは、ほとんど水らしい水がない状態でも、土中にわずかな湿り気があれば十分である。 「ヤマトシロアリは水を運べない」という、これまでの規定については大きな誤解がある。ヤマトシロアリの被害が家屋のニ階に及んだ場合でも、シロアリが活動する部分は濡れているし、畳の被害でもシロアリがいる部分は濡れている。雨漏りもないところが自然に濡れるわけはないのだから、当然にもシロアリが運んだのである。また、「湿った場所にしか住めない。湿った木しか食べない。」というのも事実として間違っている。家屋の被害ではむしろ乾いた敷居や畳寄せなどの被害のほうが目立つ。また、断熱材などの全く水を含まない物質の被害もよくみられる。 |
水とシロアリの関係については大きな誤解がある。シロアリは水があるところならどこでもいいわけではない。多すぎてはだめである。水はシロアリにとっては危険なものであり、一般には雨水が落ちるところや常に水があるところには住めない。 イエシロアリでもヤマトシロアリでも、あるいはその他のシロアリでも活動範囲に水源があれば、他に水がなくても問題はないし、わずかな湿気を水源とすることも可能である。いや、わずかな湿気を水源とするほうが、シロアリにとっては周囲の環境をコントロールしやすいという点で適応しやすい。 |
||||||||
| 樹種 |
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シロアリに木材の好みはあるかといえば、当然あるといえる。しかし、被害を受けない木はあるかといえば、それはありえない。ようするに食べられない樹種などありえない。食べられた結果に違いがあるだけである。木材の部位についても、柔らかい周縁部分だけでなく、芯などの硬い部分しかなければシロアリは加害する。 | |||||||||
| 空気と光 | 一般にシロアリは、羽アリを除けば光を嫌う性質があるが、イエシロアリやヤマトシロアリでは、密閉性が確保され空気の動きさえなければ、光への反応は割合少ない。 一方、ネバダオオシロアリでは、空気はもちろん、わずかな光の変化にも反応して暗い所へ逃げ込む。しかし、このシロアリでも光の変化がない状態では、一定の明るさのところで安定して活動している。 |
ようするに、野外でシロアリの被害木材を割った時に、シロアリがあわててもぐりこむ原因としては、第一に空気の動きであり、次いで光の変化である。 | |||||||||
シロアリの天敵
白蟻の天敵として有名なのは、オオアリクイ、センザンコウ、ツチブタ、フクロアリクイ(ナンバット)、アードウルフなど、シロアリを専門に食べる哺乳類である。
ツチブタはシロアリ食専門に発達した石臼のような歯をもち、硬い兵蟻の大顎をすりつぶして食べる。
アードウルフ(ハイエナの仲間)は、夜中に行進するタイプのテングシロアリの仲間を食べるが、シロアリの分泌する防御物質を分解するしくみをもっている。
センザンコウは強靭な爪のある足で巣を暴いてシロアリをなめとる。途中の巣の近くに寝転んで休憩する習性があるらしく、この寝こみを襲われて人間に捕まるという。
小型の天敵としてはアリがその筆頭で、ついでトカゲ、ヒキガエル、トンボ、ゴキブリ、オサムシ、クモ、ダニなど、かなり多くに生き物に食べられる。
アリが天敵だというと、「それならアリを利用してシロアリ駆除したらどうだ」とよく言われる。誰しも考えることは同じで、すでに中国ではそれを試験した人がいる。結局、うまくいかなかったそうだ。
アリが第一の天敵ということは、シロアリもそれに適応しているわけであって、アリの侵入があると、直ちに防火シャッターのように途中の通路を閉めて臨戦態勢に入るのだ。
アリがだめなら細菌という手もある。シロアリに寄生してシロアリを殺してしまう細菌を利用する方法だが、これはうまくいってメタリジウムキンが薬剤となっている。ただ、うまく使用しないと集団の中に菌が広がらないこともある。
シロアリの羽アリとアリの羽アリ
| ハチやアリの羽アリ | シロアリの羽アリ |
|---|---|
| アリやハチはメスだけの社会で、オスは一定の季節にのみ交尾の為に羽アリとなって出現して空中で交尾する。その為にアリやハチでは、どの集団も毎年羽アリを群飛させ、女王アリは体の中にある袋に精液を溜め込まなくてはならない。 | オスとメス(王と女王)が少なくとも10年近く同じ巣で暮らすシロアリでは、交尾の為に毎年必ず羽アリを出す必要はない。実際、特別な状況を除けば成長期の巣からは羽アリは出ない。 |
羽アリの発生原因1
一般には、巣が成熟すると羽アリが出ると言われてきた。たしかにそのとおりだが、それだけではない。たとえば、不十分な薬剤処理で駆除に失敗した場合や家屋の建築などで生息環境が分断されるなど大きな変化があり、それでも限られた活動範囲で生殖可能な集団が生き残った場合、きわめて高い確率で翌年または翌々年に羽アリが出やすくなる。特に集団の独立性の強いヤマトシロアリでは家屋の新築直後ですら羽アリの群飛がよく見られる。
羽アリの発生原因2
シロアリが羽アリを出すのは、アリやハチと同じように巣分かれの時と集団内部の数や勢力の調整としての意味合いがある。つまり、産卵されてどんどん増えてくる幼虫をすべて自分たちの集団の仲間として養えるほど環境がよくない場合や餌の供給、あるいはエリアの拡大が追い付かない場合に、若いシロアリを羽アリとして外に出してしまうのである。この羽アリにはすべて生殖能力が与えられているので、運良く生き残ったオスとメスが営巣して、新たな集団を形成する。特に最近の研究者の発表(松浦健二 2002年)では、ヤマトシロアリはメス一頭、あるいは2頭のメス同士でも産卵し、営巣できるとさえいわれている。
土壌性と木生息性の羽アリ
| 土壌性の羽アリ | 木生息性の羽アリ | |
|---|---|---|
| 群飛時期 | イエシロアリ、ヤマトシロアリなどの土壌性のシロアリでは、群飛した後に土にもぐって営巣するので、土の湿り具合や水源の確保は生き延びるため重要な要素となる。だから、温度だけでなく雨上がりの湿度や気圧の低下を察知して飛び出す。 | アメリカカンザイシロアリなどの土に関係なく木の中だけで生息するシロアリでは、集団ごとに群飛する時期に違いがあり、春先のものもあれば秋口もあるし、真冬のものもある。つまり、土壌と関係しないので、降雨に関係なく温度条件だけで比較的少数ずつ群飛する。 |
| 営巣確率 | シロアリの羽アリは飛翔力が弱いので、それほど遠くに飛ぶことなく着地する。なかには、風に乗って数㎞も飛ぶこともある。地面などに着地した直後にはさかんに羽ばたくが、これは羽根を落とすためだけでなく、揮発性の信号物質(いわゆる性フェロモン)を辺りに拡散させて結婚相手を呼び寄せる意味もある。羽根の付け根には「節離線(せつりせん)」という切り取り線があり、一定以上羽ばたくと容易に取れるようになっている。羽根を落として身軽になり、運良く天敵(アリ、クモ、トカゲなど)の攻撃をかいくぐって結婚相手をみつけ、ペアで営巣できた幸運なものだけが、新しいシロアリの創始者となる。 ここまで生き延びる可能性は種類や条件にもよるが、大きい集団の土壌性シロアリでは0.01%以下ともいわれている。 |
アメリカカンザイシロアリなどの木生息性のシロアリでは、飛び出したところから数m以内に営巣することが多く、行動も割合俊敏なために、特に家屋内では営巣できる可能性は、土壌性のシロアリよりもはるかに高い。 |
家屋に被害を及ぼす日本の4大シロアリを比較
| 項目 | イエシロアリ | ヤマトシロアリ | アメリカ カンザイシロアリ |
ダイコク シロアリ |
|---|---|---|---|---|
| 分布 | 千葉県以西の太平洋沿岸、山口県までの山陰沿岸、瀬戸内海沿岸、九州、沖縄を生息域とする。 | 北海道北部を除き、ほぼ日本全国を生息域とする。 | 関東地方をはじめ日本各地に点在する。寒さに強く、今後各地に分布を拡大する傾向にある。 | 沖縄や小笠原諸島のような温暖な地域を生息域とする。 |
| 活動エリア | 一つの集団の活動範囲は、地中移動で半径100m近くに達する。 | 一つの集団の活動範囲は、地中移動で数十㎝以下から数mほど。 離合・集散する性質上、数十mに及ぶこともある。 |
土壌に関係なく木の中だけで生きる性質上、狭い範囲では数十㎝の木材から、広い範囲では家屋の高い所から床下の土台までの家屋全体に及ぶ。 | アメリカカンザイシロアリとほぼ同じ。 |
| 巣の構造 | 巣の内部は、幾層にも重なる薄片(木質を多く含む)や平たい膣室からできている。 巣の外周部には「外殻」と呼ばれる粘土層があり、防水や密閉の機能を果たし、細かな穴のような通気孔で空気の管理をしている。 巣の中心には、「王台」と呼ばれる比較的大きな空間があり、女王が産卵に専念している。 多くの場合、土中もしくは建物の密閉部分に塊状の大きい巣がでくる。 |
発達した巣は不規則な形の発砲状の空間によって構成され、空間同士は狭い通路でつながっている。 内壁面は割合滑らかで清潔である。 場合によっては、各部屋に土が堆積されていることもある。 多くの場合、食害場所が巣を兼ねる。 |
木材に不規則な穴をあけて生息する。食害場所が巣も兼ねる。 | アメリカカンザイシロアリに同じ |
| 集団の特徴 | 集中型の大きな集団を形成。 本巣や分巣などを結ぶ巣のネットワーク(巣系)を形成する。 一つの集団のシロアリの数は100万匹に達する。 活動エリアは排他的であって、同じイエシロアリ同士でも集団が異なれば闘争が起きる。 |
分散型で小規模な集団を形成。 一つの集団のシロアリの数は1万~3万匹。 活動エリアに排他性はなく、集団の異なるヤマトシロアリ同士融合することさえある。 数十匹の職蟻のみのグループからも、王や女王が生まれるので分離・独立しやすい。 |
超分散型で小グループを形成。 一つの集団のシロアリの数は数匹から多くても数1千匹。 一本の柱に多数の異なる集団が住み着く。 |
アメリカカンザイシロアリに同じ |
| 被害の特徴 | 活動範囲が縦方向にも横方向にも広く、加害にかかわるシロアリの数も多いので、被害はきわめて短期間に広がり、建物の最上階まで一気に加害する。 | 家屋に甚大な被害をもたらすことは少ないが、土台や柱などの構造部分へ被害を与える。 一定の条件下では、被害が天井付近まで及ぶこともある。 |
家屋の倒壊に結びつくような甚大な被害になりにくい。 家屋だけでなく、家具調度品などの木製品全てが点々と被害を受ける。 木材に穴をあけてもぐりこむ為に、穴の周囲にはヒラタキクイムシのような木粉(やや粒が大きい)が排出される。 被害の進行とともに、木の穴に詰め込んだ大量の糞(縦じまのある俵状)が何らかの振動でこぽれ落ちる。その糞の存在で、シロアリの生息を知ることになる。 |
アメリカカンザイシロアリに同じ |
日本代表種による階級別比較
階級別比較(体長)
| 項目 | イエシロアリ | ヤマトシロアリ | アメリカカンザイシロアリ | ダイコク シロアリ |
|---|---|---|---|---|
| 職蟻 | 5.0mm前後 | 3.5mm ~5mm |
4.5mm前後 | 4.5mm前後 |
| 兵蟻 | 4.5mm ~6.5mm |
3.5mm ~6.0mm |
5.0mm前後 | 5.0mm前後 |
| ニンフ | - | - | - | - |
| 羽アリ | 6.5mm ~8.5mm |
4.5mm ~7.5mm |
5.0mm ~6.0mm |
5.0mm ~6.0mm |
| 女王 | 20.0mm ~30.0mm |
11.0mm ~15.0mm |
- | - |
階級別比較(特徴)
| 項目 | イエシロアリ | ヤマトシロアリ | アメリカカンザイシロアリ | ダイコク シロアリ |
|---|---|---|---|---|
| 職蟻 | 固定型で他の階級への成長はない(幼齢期のみ他の階級への成長がある)。 | 高齢の職蟻を除いて、他の階級への成長の可能性をもっている。 | 全ての職蟻は、羽アリへの成長途上であり、背中に翅芽(羽根として成長する部分)をつけている。 | 同左 |
| 兵蟻 | 頭部は卵形で黄色。 大顎が発達している。 防衛方式は、外敵に噛み付いて額から乳液状の防御液を分泌する「格闘・集団防衛型」。 |
頭部は円筒形で黄色。 大顎が発達している。 防衛方式は、狭い通路に頭を押し当てて侵入を阻止する「通路閉鎖・少数防衛型」。 |
頭部はヤマトシロアリよりも短い円筒形。 大顎が発達して歯がある。 触角の根元(第三節)が逆三角錐に膨らんでいる。 防衛方式は、ヤマトシロアリに同じ。 |
頭部は短く濃い茶色。「大黒天」のように見えるのが特徴。 大顎は非常に短い。 防衛方式は、ヤマトシロアリに同じ。 |
| ニンフ | - | - | - | - |
| 羽アリ | 頭部は褐色で体は橙黄色。 羽根は淡黄色で透明。 主に6月から7月頃の夕方から夜にかけて群飛する。 数千から数万匹がいっせいに飛び立つ。 電灯などの灯りに集まる |
頭部は黒褐色で体は黄色。 羽根は暗褐色。 主に4月から5月頃の雨上がりの午前中に群飛する。 巣からいっせいに飛び立つ。 |
頭と胸が茶色でその他は黒。 羽根が玉虫色に輝く。 行動が俊敏でハエのように跳ねまわるし、歩く速度も速い。 主に昼間群飛する。 温暖な日なら真冬でも群飛が起きる |
体色は薄い茶色。 羽根は透明で前縁のみ濃い茶色。 夜に群飛する 主に5月から8月に少数づつ何回にも分かれて群飛する。 |
| 女王 | - | - | - | - |
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